デンマーク郊外のジーランドという湖に一人の善良な老人が住んでいました。
老人は毎年遠くから飛んでくる野鴨たちにおいしい餌を与えて餌付けをしていました。
するとだんだん野鴨たちは考え始めるのです。
こんなに景色がいい湖で、こんなにおいしい餌をたくさんもらえる…
何も苦労してまで次の湖に飛び立つことはないじゃないか。
いっそのこと、この湖に住みついてしまえば毎日が楽しく、健康に恵まれているじゃないか、と。
それで鴨たちはジーランドの湖に住みつくようになって、飛ぶことを忘れてしまうわけです。
しばらくはそれでもよかったんです。
確かに毎日が楽しくておいしい餌にも恵まれて豊かでしたからね。
ところがある日、出来事が起きます。毎日餌を用意してくれていた老人が老衰で死んでしまったのです。
明日からは食べるものがない。そこで野鴨たちは餌を求めて次の湖に飛び立とうとします。
しかし、数千キロも飛べるはずの羽ばたきの力がまったくなくなってしまって、飛ぶどころか駆けることもできない。
やがて近くにあった高い山から雪解けの激流が湖に流れ込んできました。
他の鳥たちは丘の上に駆けあがったり飛び立ったりして激流を避けましたが、醜く太ってしまった野鴨たちはなすすべもなく激流に押し流されてしまうのです。
これが「野鴨の哲学」と呼ばれるものです。
行徳哲男師の心に響く言葉より
これはトーマス・ワトソンがIBMをつくるきっかけとなった哲学でもあります。
野生の鴨というのは、一万二百キロを無着陸飛行できるほどの力があるのに、ぬるま湯に浸かってしまい気づいた時にはすでに飛び立てなくなってしまった。
これは人間にも、仕事にも同じことが言えるのではないかと思います。
現代社会はすさまじい勢いで進化しています。難しいことはAIがすべてこなしてくれる時代になるでしょう。
これからは感性の時代です。感性のままに行動し続けることが生きるということ。
すなわち「感じて動く」感動を大切にしていくことが私のモットーです。